虫歯の多い人はがんリスクが低いことが判明した
虫歯の多い人は、一部の頭頸部がんのリスクが低いことが判明しました。虫歯により産生される乳酸が、がん細胞に対する防護効果を有する可能性があるといいます。とはいえ、虫歯自体は歯周病など体によくないことは変わらないので要注意。頭頚部がんの新たな予防法や治療法の可能性があるというだけです。
虫歯が多いとがんリスクが32%低い
今回の研究では、頭頸部がん患者399人とがんのない211人を比較したもの。その結果、虫歯がもっとも多いグループは頭頸部がんである率がもっとも低いことが判明しました。虫歯が多いグループは、性別や喫煙、飲酒、婚姻状態などの因子を考慮しても、がんリスクが32%も低かったのです。
研究を発表したアメリカのニューヨーク州立大学は「虫歯は歯周病とともに口腔内の不健康の徴候であると考えられていたので、今回の知見は予想外だった」とコメント。しかし、がん予防のために虫歯を作るべきというわけではありません。
「抗菌製品の過剰な使用や喫煙など、細菌の正常な生態系バランスを変える行為は避けるべき。健康的な食事をし、歯磨きやフロスにより口腔衛生を良好に保つべきである」と注意を促しています。
虫歯や歯科疾患自体にリスクがある
虫歯は「連鎖球菌類」「乳酸桿菌類」「放線菌類」「ビフィズス菌」などの細菌により産生される乳酸が原因で生じるもの。これらの細菌は食物の消化のほか、局所粘膜、全身の免疫で重要な役割を担っています。
細菌が減少すると慢性炎症性疾患、アレルギー、肥満、がんなどを引き起こします。これらの細菌が一部の頭頸部がんを予防する鍵となる可能性があるわけです。専門家は「今回の知見が裏付けられれば頭頸部がんの予防や治療の新たな方法につながる可能性がある」と期待を示しています。
ただし、ある専門家は「今回の研究は規模が小さく、その時点での虫歯にしか焦点を当てていない」などの欠点があると指摘します。
「歯の喪失は幼少期はおもに虫歯と外傷に起因し、成人期は歯周病に起因する。今回の研究ではこの点が調べられていない」と分析。仮に虫歯とがんリスクに関連があるとしても、虫歯や歯科疾患自体にもリスクがあると述べています。