ICUの重症患者の腸内細菌叢はどう変わるのか?
重症患者がICU(集中治療室)に入院すると、腸内細菌叢(腸内フローラ)は急速かつ大きく変化することが知られています。36件の縦断的研究・2,067人のデータをまとめた最新のシステマティックレビューが、その変化のパターンと患者の予後との関係を整理しました。
重症患者の腸内細菌叢研究で何が分かったか
重症患者のICU滞在中、腸内細菌の多様性は多くのケースで低下し、Enterococcus(腸球菌)やKlebsiella(クレブシエラ)などの「日和見病原菌」が増殖する一方で、健康な腸内環境に不可欠とされる偏性嫌気性菌(Blautia、Coprococcus、Faecalibacteriumなど)が減少することが示されました。
また、入院早期に細菌多様性が低く病原菌が優勢な状態にある患者では、死亡率が高い傾向も報告されています。ただし、研究間のばらつきが大きく、エビデンスの確実性はGRADE評価で「非常に低い」とされているため、これらの関連性を確定的なものとして捉えることはまだできません。
重症患者の腸内細菌叢研究の対象と方法
この研究は、2025年5月までに公表された文献をMEDLINE・Scopus・Cochrane CENTRALの3つのデータベースから体系的に検索したシステマティックレビューです。対象となったのは、成人の重症患者(ICU入院患者)を対象に、消化管サンプルのDNA塩基配列解析(シーケンシング)を2時点以上で実施した縦断的観察研究です。最終的に36件の研究、合計2,067人のデータが解析に含まれました。
多くの研究では「16S rRNAシーケンシング(V4領域)」という手法が用いられており、腸内細菌の種類と量を経時的に追跡しています。研究間での手法・患者背景・報告方法の違いが大きかったため、統計的なメタ解析は行わず、構造化された記述的統合という形で知見がまとめられています。また、各研究のバイアスリスクはRoBANS 2ツールで、エビデンスの確実性はGRADEフレームワークで評価されました。
重症患者の腸内細菌叢研究から見えてきたこと
腸内細菌の「多様性」を示す指標であるアルファ多様性については、31件の研究のうち18件でICU滞在中に低下が認められました。変化なしとした研究が8件、混在したパターンを示した研究が4件あり、結果は一致していませんでした。また11件の研究では、細菌群集全体の構成が時間とともに変化すること(ベータ多様性の変化)も報告されています。
細菌の種類(分類群)レベルでは、より一貫した傾向が見られました。多くの研究で共通して、Enterococcus・Klebsiella・その他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する日和見病原菌が増加し、反対に腸内環境の維持に重要とされる偏性嫌気性菌が減少していました。こうした病原菌優位の状態は、死亡率の上昇と関連している可能性が示唆されています。
一方、多剤耐性菌(MDRO)の定着との関連については、研究間で結果が一致せず、現時点では明確な結論を導くことが難しい状況です。これらの腸内細菌叢の変化には、抗菌薬の使用、疾患の重症度、ICUで実施されるさまざまな医療処置が複合的に関与していると考えられています。
重症患者の腸内細菌叢研究の生活への示唆
今回のレビューは一般の方の日常生活に直接応用できる段階のものではなく、主にICUに入院するような重症患者を対象とした専門的な医学研究をまとめたものです。ただし、この研究は「腸内細菌叢の変化が重症患者の予後に影響しうる」という視点を科学的に裏付けようとする重要な取り組みです。
将来的には、ICUにおける腸内細菌叢をターゲットにした治療法(プロバイオティクスや便微生物移植など)の開発につながる可能性が期待されています。研究者らは、今後の研究に向けて、サンプルの採取方法・シーケンシング手法・結果の報告方法を標準化することが急務であると指摘しています。
研究間のばらつきを減らし、より信頼性の高いエビデンスを積み重ねることで、重症患者の腸内環境を守る医療介入の指針が明確になってくることが期待されます。現時点では、この分野の知見はまだ発展途上にあり、断定的な臨床推奨を行える段階ではないと著者らは強調しています。
出典
Critical care science(2026)
Gut microbiome changes in critically ill adults: a systematic review of longitudinal sequencing studies.(PubMedで見る)
本記事は紹介した研究結果を分かりやすくまとめたものであり、特定の症状や病気に対する診断・治療を推奨するものではありません。健康上の不安がある場合は医師にご相談ください。本記事はAIによる翻訳・要約を活用して作成し、公開前に運営者が内容を確認しています。詳細は「制作プロセス開示」「免責事項」ページをご覧ください。
