造血細胞移植の口内炎を防ぐ?うがい薬「NAC」の効果を検証した臨床試験
造血細胞移植を受ける患者に多く見られる口内炎。その予防策として、N-アセチルシステイン(NAC)を用いたうがい薬の効果を検証した二重盲検ランダム化比較試験の結果が報告されました。重症の口内炎を有意に減らす可能性が示されています。
結論:重症口内炎の発症率を大幅に低下させた
この研究では、NACうがい薬が造血細胞移植(HCT)を受けた成人患者における口内炎(OM)の全体的な発症率を統計的に有意に減少させることはありませんでしたが、重症(WHO分類グレード3〜4)の口内炎の発症率を有意に抑制することが示されました。NACうがい薬は低コストで入手しやすく、忍容性も良好であることから、臨床的に重大な粘膜毒性を軽減するための実用的なサポーティブケア戦略となりうると研究者らは述べています。
研究の概要:対象と方法
口内炎は、造血細胞移植の前処置(コンディショニング療法)に伴う頻度の高い副作用であり、患者のQOLや治療経過に大きな影響を与えます。本研究は、単一施設で実施された二重盲検ランダム化プラセボ対照試験です。自家移植または同種移植を受ける成人患者106名を対象に、NACうがい薬群(54名)とプラセボ群(52名)に1対1の割合で無作為に割り付けました。NACうがい薬は1回600mg、1日4回(合計1日2400mg)投与され、前処置の開始日から移植後14日目または好中球の生着のいずれか早い時点まで使用されました。口内炎の評価は、世界保健機関(WHO)の口腔毒性スケールを用いて毎日行われました。主要評価項目は、あらゆるグレードの口内炎の発症率と、重症口内炎(WHOグレード3〜4)の発症率でした。
結果:重症口内炎の発症率に明確な差
あらゆるグレードの口内炎の発症率は、NAC群で54名中33名(61.1%)、プラセボ群で52名中38名(73.1%)であり、両群間に統計的に有意な差は認められませんでした(P値=0.190)。一方、重症口内炎の発症率はNAC群で54名中3名(5.6%)、プラセボ群で52名中13名(25.0%)であり、NAC群で有意に低い結果が示されました(P値=0.006)。WHOグレードの全体的な分布においても、NAC群が有利な傾向を示しました(P値=0.046)。安全性については、NACうがい薬はおおむね良好に忍容され、消化器系の副作用は軽度かつまれでした。また、多変量解析の結果、同種移植、骨髄破壊的前処置、服薬遵守の不良、およびプラセボへの割り付けが、口内炎発症の高いリスクと関連していることが示されました。
生活への示唆
この研究結果は、造血細胞移植を受ける患者にとって、NACうがい薬が特に重篤な口内炎を予防する手段の一つとなりうる可能性を示しています。ただし、本研究は単一施設での実施であり、研究者らは複数施設での検証や、標準化された製剤・患者報告アウトカムを用いたさらなる臨床試験の必要性を指摘しています。NACうがい薬の使用については、担当医や医療チームと相談のうえ、個々の状況に応じた判断が重要です。
出典
Supportive care in cancer : official journal of the Multinational Association of Supportive Care in Cancer(2026 Oct 04)
N-acetylcysteine mouthwash for prevention of oral mucositis in hematopoietic cell transplant recipients: a double-blind randomized controlled trial.(PubMedで見る)
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