再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に新たな選択肢か——新規薬剤イフピノスタットの第2相試験結果
標準治療後に再発または難治となったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者を対象に、新規の二重標的阻害剤「イフピノスタット(BEBT-908)」の有効性と安全性を評価した多施設共同の臨床試験結果が報告されました。約3割を超える患者で腫瘍の縮小が確認され、研究グループは治療の新たな選択肢となりうると述べています。
何が分かったか
今回の研究では、2つ以上の治療歴を持つ再発・難治性DLBCL患者において、イフピノスタット単独療法による客観的奏効率(腫瘍が一定以上縮小した患者の割合)は36.5%であることが示されました。このうち完全奏効(腫瘍が画像上で消失した状態)は11.3%の患者で達成されました。また、治療に関連した副作用は高頻度に認められたものの、治療に起因する死亡例はなく、研究グループは「管理可能な安全性プロファイルを持つ」と評価しています。
研究の概要——対象と方法
本研究は、中国で実施された多施設共同・単群の第2相臨床試験(試験登録番号:ChiCTR1900028179)です。対象は、標準的な全身療法を2ライン以上受けた後に再発または治療抵抗性となったDLBCL患者で、2020年6月から2022年7月にかけて128人が登録されました。
イフピノスタットはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とホスファチジルイノシトール3キナーゼα(PI3Kα)という2つのタンパク質を同時に阻害する新しいタイプの薬剤です。投与は21日を1サイクルとし、1・3・5・8・10・12日目に22.5 mg/m²を点滴静注する方法で行われました。主要評価項目は、盲検化された独立中央審査機関による客観的奏効率(ORR)とし、副次評価項目として疾患コントロール率、奏効持続期間、無増悪生存期間、全生存期間、安全性が検討されました。
結果
有効性解析対象の115人において、ORRは36.5%(42人)、完全奏効率は11.3%(13人)でした。奏効が得られた患者における奏効持続期間の中央値は6.2か月(95%信頼区間:3.5〜14.5か月)でした。無増悪生存期間の中央値は2.7か月(同:1.6〜3.7か月)、全生存期間の中央値は9.9か月(同:7.8〜14.8か月)で、データ収集終了時点(2023年7月)での追跡期間の中央値は約19.6か月でした。
安全性については、安全性解析対象128人のうち99.2%(127人)に何らかの治療関連有害事象が認められました。グレード3以上の重篤な治療関連有害事象は86.7%(111人)に発生し、最も頻度が高かったものは血小板減少症(75.8%)、好中球減少症(33.6%)、白血球減少症(22.7%)でした。これらは血液毒性に分類されます。一方で、薬剤投与に直接起因する死亡例は報告されませんでした。
生活への示唆
DLBCLは成人に最も多く発生する悪性リンパ腫のひとつですが、再発・難治性の場合は治療の選択肢が限られており、予後は依然として厳しい状況にあります。本研究は、既存治療では効果が得られなかった患者に対してイフピノスタットが一定の有効性を示す可能性を示唆しています。
ただし、本試験は単群(対照群なし)の第2相試験であり、標準治療との直接比較は行われていません。また、グレード3以上の血液毒性が高い割合で認められており、投与中は定期的な血液検査による慎重なモニタリングが必要と考えられます。今後、より規模の大きな比較試験によって有効性と安全性のさらなる検証が求められます。現時点ではあくまでも研究段階の知見であり、治療方針については専門医との相談が重要です。
出典
Signal transduction and targeted therapy(2026 Oct 19)
Efficacy and safety of ifupinostat in relapsed or refractory diffuse large B-cell lymphoma: a multicenter, single-arm phase 2 study.(PubMedで見る)
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